『Baby large
panic!?‐4‐』
午後の検診まで少し時間があるのでそれまで如月宅で待機中。
それを歯がゆく思っているのは自分だけではないだろう。
そう考えながら、窓の外に視線を投げていた、一条雅良。
一体全体何がどうして、伸吾が妊娠、ということになってしまったのだろうか。
内心、不安で一杯であった。
「一・・条?」
「ん、どうしたんだ?」
伸吾の恐る恐るの呼びかけに、自分が眉間にしわを寄せていたことに気づき、其処を指で揉みながら返事をした。
「いや、なんかさっきからすごく怖い顔だったから・・・その・・・」
「・・悪い、少し考え事をな」
安心させてやろうと、優しく頭を撫でてやると、少し驚いたように目を見張った伸吾を見て、ふと・・・
(もし、本当に生まれるのだとしたら・・・やはり、伸吾に似ているのだろうか?)
昨日、如月先生の兄が言っていた言葉を思い出していた。
『相手がいなくても妊娠してしまう』
果たして、そんな突拍子もない論理が成立するのかさえ怪しいと思えるところだが・・・
ふと、それでも、考えてしまう。
(もし、似ていたらやはりミニチュアだろうか?)
今の伸吾をそのまま小さくしたイメージが浮かんできた。
(やはり、ここはきちんと勉強をさせなければいけないな)
伸吾の頭を未だに撫でつつ、そう考える。
(伸吾が、この調子だと絶対に生まれてきた子供はやんちゃくれだ。動くことは好きでもじっとしていることは嫌いだろう)
なら、それにも鳴らしておかなければ・・・などと考えながら。
(算数、国語、理科、社会、英語・・・体育や、美術は置いておいて、あと、パソコンもだな。パソコンが使えなければこれから先、生きていけない)
早くも教育ママが・・・
(呼び方もきちんとさせなければいけないな。絶対に一条とは呼ばせない。名前か・・・そうだな、「お父さん」でもいいな)
自然と口元がほころんでいく。
「い・・・・一条・・・・・・?」
(小学校卒業して・・・中学、高校・・・せめて大學までは行かせてやら無ければな。高校は・・・出来れば国立か私立がいいな)
妄想は膨らみ・・・
(そのうち彼女なんか連れてくるんだろうか?)
いつ、性別が男と断定されたんだ?
(・・・彼女・・・)
伸吾(そっくりの子)の隣にいる女の子。
(・・・・・渡さん・・・・必ず)
「い・・一・・・条・・・・・・?」
いらぬ想像に嫉妬を抱き、再び険しい表情をする一条であった。