「・・・今、なんと・・・・?」
「だから、夜這いに来たんだって」
夜這い
それは嵐と成るであろう、強風が吹きぬける夜のこと。
その夜、呂蒙は遅くまで仕事をこなしていた。そして、そろそろ寝るかと、仕事にひと段落付け、何気なく窓から外を見やったのだった。
夜は曇り空も相まって何時もに増して暗く、先があるかどうかまったく分からない様子だった。
その中で強く吹きぬける風が、湿った空気と共に運ばれている。
あと少ししたら雨も降り出すであろう。今夜はしっかりと窓を閉めなければ大変な事になりそうだ。
そう考え、使用人が確認したと思われる窓を見て回ることにした。
いつもやっているわけではない。ただの、気まぐれだった。
明かりを片手に屋敷の窓を見て回る。歩く廊下は更に暗く、明かりを翳しても目の前ぐらいまでしか見ることは出来なかった。
全ての窓を確認し終え自室に戻ると、手に持っていた明かりを寝台の横に備え付けていた台の上へと置いた。
寝る仕度を整え、寝台に横になり一息を着く。また明日も朝から書類相手にまた格闘せねばならない。
そう考えると少し憂鬱だが、今はもう寝てしまおう。
徐々に重くなっていく瞼をそのままにゆっくりと訪れる眠気に身を任せた。
どれくらい眠っただろうか。
ふと、何かの気配に目が覚めた。書類仕事が主だとしても、腐っても武将である。これでも鍛えてはいる。
外は大雨と強風により騒音のように騒ぎ立てている。
相手に感づかれないよう寝返りを打つように相手の方に体を向けた。しかし、いくら目を凝らしても今宵の暗さは人の視力を凌駕している。
ゆっくりと、近づいてくる気配。呂蒙はゆっくりと寝台の下に備えてあった刀へと手を伸ばし相手の出方を伺った。
こんな夜に盗人だろうか。しかも武将の屋敷に。
おかしいとは思いながらも、相手の気配に気を配る。
後、十歩。
風が唸り木々を鳴らす。
後六歩。
雨が叩き水音が響き渡る。
後・・・二歩ッ!!
手にしていた刀を一気に振り仰ぐ。
「ッ!!」
「誰だっっっ!?」
そのまま起き上がり、相手へと飛び掛る。勢いのまま、相手を押し倒す格好で床へと転がった。
寝る前にあった明かりは当に消え、目の前に相手の顔を持ってきても確認するのは難しかった。
「何の用だっ!?」
「お〜・・・怖ぇ〜」
「・・・その声・・・」
暗闇の中、聞こえてきた声に聞き覚えがあった。
「甘寧・・・か?」
「当たり」
どこかふざけたような声。呂蒙は相手を確認すべく、吐息が掛かりそうな距離まで顔を近づける。
そして、ようやく確認できた仲間の顔。そこでようやく詰めていた息を吐き、手にしていた刀を床に置いた。
「何しにきた・・・?」
一先ず甘寧の上から退き、そのまま床に腰を下ろした。
若しくは、余りの突拍子な行動に腰が抜けたとも言っていい。
そんな呂蒙の様子を笑っているのかいないのか、見えない相手は酷く楽しそうにこう告げた。
「夜這いに来た」
「は・・・?」
外の嵐は先ほどと変わらない。
嵐の音で、自分の耳は今の言葉を変な風に拾ってしまったのだろうかと、呂蒙は間の抜けた声を出した。
そして、もう一度確認する。
「・・・今、なんと・・・・?」
「だから、夜這いに来たんだって」
どうやら、自分の耳は正常だったらしい。ついでに外の嵐も関係がなかったようだ。
それはそれでよかった。そんな考えを頭の隅で起こしながら、呂蒙は今ある現実を理解できずにいる。
夜這いだと言いまわる相手は何を考えているのだ。
雪玉を坂の上から転がすように、瞬く間に頭の中が混乱していく。
「おい、おっさん?聞いてんのかよ?」
相手が詰め寄ってきたのを感じ、反射的に後ろの寝台まで飛びのいた。
夜這い、間違えていたりしなければ当てはまる意味はただ一つ。
「・・・・何故・・・と、聞いても良いか・・・?」
恐る恐る訪ねると、甘寧はさも面倒そうにあーと、間延びした声を発する。
「理由なんかあんのかよ、こんなことに・・・・ま、強いて言うなら、そうだな・・・・日頃の礼ってとこじゃねーか?」
「礼・・・だと?」
確かに甘寧が起こした不祥事の尻拭いは大抵自分に回ってくる。そして、なんだかんだと文句を言いつつもそれを片付けるのは自分だ。
そう考えると、礼を言われる筋合いはなくはない。なくはないが、こんな風に返されるとは思っても考えてもいなかった。
「ま、気難しい話はここまでとして」
「終わらすな!」
「あー・・・面倒くせぇーなぁ・・・」
「面倒臭いとかでは無いだろうが!」
「ちぇ・・・気難しいな、禿げるぞおっさん」
「おっさんと言うなと何時も言っているだろうが!!それにまだ禿とらんわ!!」
少々気にしていた事さえもさらりと言われてしまい、思わず反論する。
今はこんなことで議論しているわけには行かない。
思い直して、徐々に近寄ってくる相手の気配を手で何とか静止、呂蒙はなんとか打開策を探していた。
しかし混乱した頭ではやはりいい考えは思いつかず、気がつけばすぐ目の前にまで甘寧の顔を迫っていた。
「だから、面度くせぇーことは貫きにしろって。いい思いさせてやっから」
そのまま床に倒されてしまった。
暗さで相変わらず相手の顔は見えない。すると、今度は耳元で声が響いた。
「気持ちよくしてやるよ」
「っく・・・・ぅ」
暗闇の室内。外から聞こえてくる夥しい水音とは違った性質の音が、今室内を占領していた。
粘着質を含んだその音は止まることを知らず、次々と部屋の中に転がっていく。
寝台に背を預け、冷たい石床の上に座る感触はもう既になくなってしまっていた。
「甘・・・寧・・・」
「気持ち良いだろ・・・?」
相手の名を呼び、その髪に手を差し込む。すると、名前を呼ばれた相手は蹲っていた体制から頭を持ち上げ、今度は手で雄を扱き始めた。
「うッ・・・」
「おっさんの俺の手の中ですっげぇビクついてやがる」
楽しそうな声。
甘寧は雄の先端に親指の爪を何度も引っ掛けるように刺激し、同時に片手で竿を扱く。
「か・・もう、離・・さんか・・っ」
「いいから、このまま達っちまえよ」
そして、再び口内に含まれた呂蒙は我慢することが出来ず、そのまま絶頂を迎えた。
射精後の気だるさと上がってしまった息を何とか整えようとしていると、暗闇の中何かを嚥下する音が聞こえた。
ぼやけた頭の中でその音を聞く。
「って、甘寧!?」
「あ?何だよ?」
甘寧が喋る度、どこか粘着質の音が混じる。
「あ、じゃないわ!貴様というやつは・・・!!」
自分が出したものを嚥下した相手に対し、酷く羞恥を掻き立てられた呂蒙は甘寧の口の中に指を突っ込み、喉の奥へと押しやった。
「出せ。今すぐ吐き出せ!」
「ちょ・・・!?」
反対の手では顎を強く捉えられ、甘寧は抵抗の意味も込め、その指に強く吸い付いてやった。
「ぅおわ!?」
行き成りの反抗に思わず変な声を出してしまった呂蒙に、未だ吸い付いている甘寧は目で相手を笑った。
そのままその手を掴み、指に舌を絡ませた。呂蒙は思わず引き抜こうとするが、しっかりと手を捕らえられていてはそうも行かない。
再び先ほどの粘着質な音が響く。
最初に押し込まれた人差し指、次に中指を口に含み暫くは同じように舌を絡める。
「・・・はぁ・・・おっさんもようやくその気になってくれたか」
「ち、違う!!儂は・・・!!」
「いいっていいって。そんな照れんなよ」
「照れとらんわ!!」
呂蒙の怒鳴り声も何処吹く風で左から右に流すと、掴んだ手をそのままで呂蒙の膝の上に乗り上げた。
「なぁ、おっさん。ここは灯りはないのかよ?」
「灯りだ・・・?」
「こう暗くちゃおっさんの顔拝めやしねぇ」
「誰が教えるか」
甘寧の台詞に即座に拒否を示すと、乗りあがった体は笑っているのか震えている。
そんな様子に剥れた気持ちで捕まれていた腕を乱暴に払う。
案外あっさりと外れた手は勢い余って横に設えてあった台にぶつかった。
「そこにあんだな?」
「こ、こら甘寧!?」
呂蒙の肩に手を置き体制を無理やりに変えた甘寧は手探りに台の上を探った。そして灯り油の入った器を見つけると、その横にあった火打ち石まで見つけてしま
い、この暗闇のなかいとも簡単に灯りをつけてしまった。
「よし、これでいいな」
「・・・・」
もう、何と言ってしかればいいのか分からなくなってしまった呂蒙は盛大に溜息をつくことで相手に意思表示を見せた。
「何だよ?何か不満でもあんのか?」
「不満どころではないわ・・・ったく・・・」
「いいじゃねーか、俺もおっさんも気持ちいい。これの何処に不満があるんだ?」
もう何も言うまい、そう呂蒙は心に呟いた。
「ほら、続きやろうぜ」
そして、もう抵抗する気力さえ、今の呂蒙にはなくなってしまった。
「んっ・・・そう、ゆっくりと・・・・入れろ・・・・」
自分の指が酷く熱い何かに包まれる感触は何とも言えない物だった。
甘寧に言われるがまま、ゆっくりと指を押し入れる。そのまま根元まで深く埋めると好奇心に指で軽く押し上げてみる。
それに反応するかのように熱い肉は自分の指を締め付けた。
「っぁ・・・!」
軽く押し上げると同時に、膝上の相手は息を詰める。
その様がこの相手に限っては珍しい。呂蒙はそちらに興味が湧き、更に指で押し上げてみる。
先ほどの暗闇と違い、今は薄っすらと灯りが燈る部屋の中。相変わらず外の方は嵐で煩い。
「ク・・ぅんっ・・・」
ふと、呂蒙はある一点に違和感を感じた。
その痼は今の指の位置では丁度第一関節といったところか。
不思議に思い、軽く指を抜くとその痼を触れる位置まで指を持ってきた。
「・・・ッ!!・・・ッま、待て!!其処は――ッ!!」
その途端、今まで呂蒙の好きなようにさせていた甘寧は、焦ったような声を出し呂蒙の腕を掴んだ。
しかし、捕まれた腕はそのまま握られる力に連動し、自然と呂蒙の指が内側へと動かされることとなる。
「っく・・・あぁッ!!」
「どうした!?」
行き成りの叫ぶような声。動転する呂蒙に脱力するように縋った甘寧は腕を掴んだまま痙攣するかのように震えていた。
そして、呂蒙の腹あたりにねっとりとした熱い物が広がる。
「・・・お前・・・」
「だから・・・止めた・・・のに・・・」
脱力したまま途切れ途切れに呟かれた言葉に、呂蒙は小さく溜息を吐き、甘寧を離すと寝台へと引きずり上げた。
「おっさん・・・?」
突然な行動に未だ整え切れていない息で、甘寧は薄明かりの呂蒙の顔を見上げた。
「流石にずっと石床の上に居ては腰が痛くなる」
「・・・・クックックッ・・・成程な」
そうして、今宵初めての口付けを交わした。
「先ほどの箇所は、ここだったな・・・」
「ぁあッ・・!」
寝台に甘寧を押し倒す格好で呂蒙は先ほどのように指を相手の中に埋めていた。
先ほど触れた箇所。どうやら一つの弱点のようなものらしい。そこを押し上げるたびに甘寧の身体は陸に上げられた魚のように跳ねる。そして、その度に雄の臭
いが濃くなって来る。
「これはこれで・・・不思議なもんだな」
まるで、中と雄が繋がってるかのような動きに呂蒙は純粋な好奇心で其処を集中的に弄り始める。
「ひっ・・あ・・あぁあ!」
「もう達しそうだな甘寧?」
余りの反応に面白くなる。
ここまで、この相手を翻弄することはコレ以外には無いのではないだろうか。
埋めている指を二本に殖やし、更に強く押し上げてみる。
「――――ッ!!!」
声の無い悲鳴。
しかし、今度は――先ほど出したためか――絶頂に達するまででは無かったらしく、固く反り返る雄からは糸を引くような白い液が
数滴、先端から滴り落ちた。
「ほぉ、今度は持ち堪えたか」
「く・・そが!」
「何を言ってる。こうしろと望んだのはお前だぞ甘寧」
更に文句を言う口を塞ぎ、埋めている指を律動させる。
その度に漏れる声に、呂蒙は再び己の雄が熱くなっていくのを感じた。
「甘寧・・・」
唇を離し、その耳元で名を呼ぶと縋るように腕を背中に回される。
「いいぜ・・・来いよ」
「くッ・・・きつい・・・な」
「あ・・ぁああ・・」
徐々に押し上げられる中。異様なほどの圧迫感。
余りの締め付けに、眩暈を感じる。
ああ、男はとことん受け入れる側では無いのだと思い知らされる。
何とか全てを収めると、中が馴染むまで息を潜めゆっくりと甘寧の上に覆いかぶさった。
「大丈夫、か・・・?」
「あん・・た、こそ・・・大丈夫かよ?」
苦しい声で問えば同じような苦しそうな声で答える。
息が短く、互いの身体は燃えるように熱かった。
「そろそろ・・・動くぞ」
「・・・ん・・・」
強い締め付けに顔をしかめつつも、ゆっくりと腰を送る。
奥歯を噛み締め、迫り来る絶頂感をやり過ごす。
「あっ・・んぅっ・・・お、っさん・・」
「な、んだ?」
「もっと・・・動け・・・よッ・・」
少しずつ相手を考える余裕が生まれ始めていた呂蒙は今度こそ意識を持ってかれる眩暈に襲われた。
折角押さえている正気を根こそぎ持っていく気か、と呂蒙は相手を睨みつけるが甘寧は中でゆっくりと動く雄を馴れたように締め上げる。
「っく!」
「ほら・・・早、く動け・・って」
「知らんぞ・・・どうなっても・・・」
悔し紛れにそれだけ呟くと今度こそ本格的に攻め立て始める。呂
蒙は指で散々弄ったそこを己の雄で押し上げるように擦り上げる。
「ウ・・アァッ・・あぁああっ!!」
「先ほどの・・ここ、だ・・ろう?」
仄暗い灯りに写る甘寧の顔は快感に歪んでいる。
それを認識すると、殊更にその箇所を集中的に攻め立て始めた。
「ひッ・・ぅああっ・・・呂・・んぁっ・ぅうぁああ!!」
その姿は狂っていると言った方がいいのかもしれない。
その箇所を擦る度、押し上げる度に発せられる叫びに近い嬌声。
呂蒙も己の雄の限界を感じ始めていた。
「甘・・寧・・・」
「あぁっひぁッ・・・ああっし・・めぃ!!」
押し出されるよう呼ばれた名前に呂蒙は思わず、今迄以上に其処
を押し上げる形で中へと分け入った。
「っ!!」
「やっ!?アッ・・あぁあああああっっっっっっ!!!!」
次に目が覚めたのは、雨戸から早朝の光が差込始めた頃。
既に昨夜の嵐は過ぎ去ったらしく、外からは鳥の鳴き声が聞こえてくる。
呂蒙は隣で眠っている相手に目をやると、溜息混じりに額に手を当てた。
まんまと食われた気分だ。
実際、最初の一回を筆頭にそのまま幾度と無くその身体を貪ったことか。
変な腰のだるさと昨夜の癒えていない仕事の疲れ。
今日は全うに職務に就けそうも無い。
戻る
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えー・・・すっごく久々です・・・裏。
いやですね、読むの好きだったんですが、書いてみたら何かすっごく
難しく、何度書いては消してと、やっていたんですよ・・・;
アンケートで無双に入れてくださった方がいらっしゃったので、
今回はちょっくら頑張ってみました。
今度PC周辺機器である複合機を買ったら、
蒙寧の絵をUPしたいと思っています。
因みに、まったく関係ありませんが狼、レモン“檸檬”の漢字を覚える際に、
『木の上で甘寧が呂蒙の上に跨る』と覚えました。
あはははは。
もし、気に入って下さったらコメントをv(馬鹿)