何万もの轟く罵声。そして馬の走る蹄の音。
何処かからは人の悲鳴も聞こえてくる。
ここは今戦場なのだと自分にひしひしと伝えてくる。
そして、今自分が立っている場所は色んな者を切り殺してきたその上なのだとも。

「どうした?今更ながら恐くなったか?」
「な〜に言ってんだよ。俺が恐がるとでも思ってんのかおっさんは」
「おっさんと言うなといつも言ってるだろうが」

こうして戦っている中でも冗談を言う余裕はまだある。まだいける。やれる。

「じゃ、甘興覇!先陣をきってくるぜ!!」
「ええ。期待していますよ甘寧殿」

今居る場所から呂布がいるといわれる場所までは馬を走らせればすぐだが、そうなると敵兵への攻撃があまりできず後陣に控えている本隊が動きずらくなる。
だから今は目の前に居る敵を一人でも多く倒すことが何よりも大事になる。
こうして、戦っているとどうも自分が人間という生き物だということを忘れそうになる。刀で肉を貫く感触、相手の返り血の暖かさそれさえも自分には感極まり無いもののように感 じさえもする。
そんな人間普通は居ない。
きっと自分は獰猛な野獣なのだろう。
そう、肉と血に餓え倒した相手の血肉を貪り生きる野獣。
それとも、この感覚は元賊だからだろうか・・・・それなら、あいつは・・・周泰は、どう感じているのだろう・・・


「危ない!!」


言葉と共に、何かが空を突き抜ける音と何かが跳ね返す音が聞こえた。
瞬時に振り返ろうとしたが何かに抱しめられるように動きを止められてしまった。

「貴様はもう死にたいのか!?」

そして、其処に居たのは、昨日ともに酒を飲んだあの夏候惇だった。

「あんた・・・・」

自分に飛んできていたはずの矢は叩き落され、放った敵兵は夏候亨が連れていた護衛兵がすべて切り刻んでいた。
それを確認し、夏候惇は抱いていた腕を離した。

「お・おい!!肩!!!」

夏候惇の右肩には、矢が一本刺さっていた。

「こんな物・・・」

左手で、掴み血が吹き出るのも構わず勢いよく抜き、投げ捨てた。

「大した傷に入りもせぬわ・・・」
「・・・はぁ・・・俺に負けず劣らず豪快なやつ・・・・」

血が吹き出て、徐々に弱まっていった。
衣服には右腕にかけて血が染み込み赤黒く染め上げていた。

「ところで餓鬼。貴様はもう死んでしまいたかったのか?」
「・・・・別に・・・ただ、考え事をしていただけだ」

なぜか、昨日から餓鬼と呼ばれるようになってしまっていた。

「ほう?この戦の中で勝利いがいに何を考える?」

護衛兵を先に行かせ肩の傷を持っていた布で縛りながら聞いてきた。

「あんたには、関係ねーだろ」
「助けてやった者に対してかなり傲慢だな」
「悪かったな。俺は元賊だからな。傲慢な態度しかできねーんだよ」

そうしている間にも戦はどんどん火坑へと進んでいく。

「ほら、早く行かねーとあんたんとこの殿様が機嫌悪くするぞ」

そう言ってやれば、戻るものかと思っていた。

「殿は・・・平気だろう。あれほどの兵士で囲んでいるし、殿自身もかなりの剣の使い手 だ」
「・・・・・・へ?」
「何情けない声をだしている?ほら、行くぞ!!」

そういうとおもむろに腕を惹かれ再び戦陣の中へと引き込まれていった。

「そういえば、餓鬼。お前の軍は大丈夫なのか?」
「・・ああ、平気だ。上手く進んでるみてーだな」

後ろを確認し、本陣の位置を確認した。

「なら、特攻隊は特攻隊らしく先陣を切っていくだけだな」
「って、あんたもかよ?」
「昨日いったろ?」
「酒の所為で忘れちまってるよ!そんなこと!!」

そんなふうに話しながらも目の前に居る敵兵の腹に、首に、頭に次々と刀を突き刺し、切り捨てていった。
さっきまで自分が野獣と考え、あいつはどう思っているのだろうと考えていたが、なにやらこの男が背中に居ると思うとそう考えている暇も無いような気がしてきた。
そうだ。今は考えずただ切っていけばいい。
考えることは相手の急所のみ。

「急に切れ味が良くなったじゃないか」
「お互いにな!!」

そんな時、遠くから呂布の出現と思われる悲鳴が聞こえた。
それを倒すことが一番の条件であり、自分に課せられた使命でもあった。

「よっしゃ!!いっちょやったるぜ!!」

命、別に考えたことはなかった。
ただ、より強い相手を求めただけ。
ただ、それだけだ。
目の前にそれに叶うものが現れたなら挑むのみ。
そう。それだけが自分にある唯一の絶対。
例え自分が傷つこうとも、命に関わる傷を負ったとしてもその絶対を変えることは不可能なのだろう。
今の考えることはそれだけ。
呂布の繰り出す一撃を受け止めながらふとそんなことを思った。
だが、先ほどのように気がそれることなく、力が緩むことも無く、決して負けないという気持ちが強く存在していた。
例えそれが自分より強いと思う相手を目の前にしても。
何万もの轟く罵声。そして馬の走る蹄の音。
何処かからは人の悲鳴も聞こえてくる。
ここは今戦場なのだと自分にひしひしと伝えてくる。
そして、今自分が立っている場所は色んな者を切り殺してきたその上なのだとも。

「どうした?今更ながら恐くなったか?」
「な〜に言ってんだよ。俺が恐がるとでも思ってんのかおっさんは」
「おっさんと言うなといつも言ってるだろうが」

こうして戦っている中でも冗談を言う余裕はまだある。まだいける。やれる。

「じゃ、甘興覇!先陣をきってくるぜ!!」
「ええ。期待していますよ甘寧殿」

今居る場所から呂布がいるといわれる場所までは馬を走らせればすぐだが、そうなると敵兵への攻撃があまりできず後陣に控えている本隊が動きずらくなる。
だから今は目の前に居る敵を一人でも多く倒すことが何よりも大事になる。
こうして、戦っているとどうも自分が人間という生き物だということを忘れそうになる。刀で肉を貫く感触、相手の返り血の暖かさそれさえも自分には感極まり無いもののように感 じさえもする。
そんな人間普通は居ない。
きっと自分は獰猛な野獣なのだろう。
そう、肉と血に餓え倒した相手の血肉を貪り生きる野獣。
それとも、この感覚は元賊だからだろうか・・・・それなら、あいつは・・・周泰は、どう感じているのだろう・・・


「危ない!!」


言葉と共に、何かが空を突き抜ける音と何かが跳ね返す音が聞こえた。
瞬時に振り返ろうとしたが何かに抱しめられるように動きを止められてしまった。

「貴様はもう死にたいのか!?」

そして、其処に居たのは、昨日ともに酒を飲んだあの夏候惇だった。

「あんた・・・・」

自分に飛んできていたはずの矢は叩き落され、放った敵兵は夏候亨が連れていた護衛兵がすべて切り刻んでいた。
それを確認し、夏候惇は抱いていた腕を離した。

「お・おい!!肩!!!」

夏候惇の右肩には、矢が一本刺さっていた。

「こんな物・・・」

左手で、掴み血が吹き出るのも構わず勢いよく抜き、投げ捨てた。

「大した傷に入りもせぬわ・・・」
「・・・はぁ・・・俺に負けず劣らず豪快なやつ・・・・」

血が吹き出て、徐々に弱まっていった。
衣服には右腕にかけて血が染み込み赤黒く染め上げていた。

「ところで餓鬼。貴様はもう死んでしまいたかったのか?」
「・・・・別に・・・ただ、考え事をしていただけだ」

なぜか、昨日から餓鬼と呼ばれるようになってしまっていた。

「ほう?この戦の中で勝利いがいに何を考える?」

護衛兵を先に行かせ肩の傷を持っていた布で縛りながら聞いてきた。

「あんたには、関係ねーだろ」
「助けてやった者に対してかなり傲慢だな」
「悪かったな。俺は元賊だからな。傲慢な態度しかできねーんだよ」

そうしている間にも戦はどんどん火坑へと進んでいく。

「ほら、早く行かねーとあんたんとこの殿様が機嫌悪くするぞ」

そう言ってやれば、戻るものかと思っていた。

「殿は・・・平気だろう。あれほどの兵士で囲んでいるし、殿自身もかなりの剣の使い手 だ」
「・・・・・・へ?」
「何情けない声をだしている?ほら、行くぞ!!」

そういうとおもむろに腕を惹かれ再び戦陣の中へと引き込まれていった。

「そういえば、餓鬼。お前の軍は大丈夫なのか?」
「・・ああ、平気だ。上手く進んでるみてーだな」

後ろを確認し、本陣の位置を確認した。

「なら、特攻隊は特攻隊らしく先陣を切っていくだけだな」
「って、あんたもかよ?」
「昨日いったろ?」
「酒の所為で忘れちまってるよ!そんなこと!!」

そんなふうに話しながらも目の前に居る敵兵の腹に、首に、頭に次々と刀を突き刺し、切り捨てていった。
さっきまで自分が野獣と考え、あいつはどう思っているのだろうと考えていたが、なにやらこの男が背中に居ると思うとそう考えている暇も無いような気がしてきた。
そうだ。今は考えずただ切っていけばいい。
考えることは相手の急所のみ。

「急に切れ味が良くなったじゃないか」
「お互いにな!!」

そんな時、遠くから呂布の出現と思われる悲鳴が聞こえた。
それを倒すことが一番の条件であり、自分に課せられた使命でもあった。

「よっしゃ!!いっちょやったるぜ!!」











命、別に考えたことはなかった。



ただ、より強い相手を求めただけ。



ただ、それだけだ。



目の前にそれに叶うものが現れたなら挑むのみ。



そう。それだけが自分にある唯一の絶対。



例え自分が傷つこうとも、命に関わる傷を負ったとしてもその絶対を変えることは不可能なのだろう。



今の考えることはそれだけ。



呂布の繰り出す一撃を受け止めながらふとそんなことを思った。



だが、先ほどのように気がそれることなく、力が緩むことも無く、決して負けないという気持ちが強く存在していた。



例えそれが自分より強いと思う相手を目の前にしても。



その気持ちは動きそうもなかった。









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その気持ちは動きそうもなかった。
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