憩い
気がついたら、其処は自分の陣地で。
目の前には、不安を顔に描いた呂蒙のオッサンと、陸孫。
それから、視界の隅に稜統と孫権様、そして週泰がいた。
昼も過ぎた頃。
俺は目を覚まし、早朝まで行われていた戦の結果を聞いた。
「大したやつよ。お前が敵頭を持ってきてくれたおかげだ」
「本当に、お疲れ様でした」
「よくやったぞ、甘寧」
そう、口々と褒められ、俺はどこか安心したような物足りないような、そんな気がした。
生きている。
死んではいない。
まだ、死んでいない。
そんな中、稜統は何もいわず、しかしいつもの剣呑の眼差しとも違った複雑な表情を浮かべ、こちらを見ていた。
「え?休暇?」
そしてあの戦から数日、俺は未だ本調子ではない身体を引きずって殿の執務室に来ていた。
「ああ。お前はこの間の戦で大きな成果をもたらしてくれたが、その所為で未だ本調子ではないだろ?」
「ええ・・まぁ」
「だからな、褒美と言っては少ないかもしれないが、暫しの休暇をと思ったんだが」
どうだ?と、聞かれ俺は考えていなかったことに正直面食らっていた。
「あの・・・それって・・・左遷って・・・・ことじゃぁ・・・・」
「・・・・・くっははははは!!!」
「笑うなんて酷いっすよ!!」
「い・いや、悪い・・・。そうか、左遷か・・・くっくっく・・・」
どうやらつぼにはまってしまったらしい殿は暫く笑うと、落ち着いたらしく、
「そういうわけじゃないんだ・・・ただ単に、休んでもらいたいだけだ」
そういった。
「だったら、喜んで」
そうして、俺は暫しの休みとなった。
場所は、城からそれほど離れていない場所。
小さな集落と、畑。そして、鬱蒼と広がる森と山。
「ん〜・・・・」
俺は宛がわれた部屋で伸びをすると、その体制のまま後ろにある寝台へと倒れこんだ。
「・・・・・」
結局、俺は意識を手放した時に助けに来たやつを誰か知らない。
一回聞きそびれちまったら、聞く機会を逃してしまっているような感じだ。
周泰・・・・だったのだろうか?
そうは思いながらも、心の中では違うと知っていた。
何せ、周泰はあんな大声を上げはしない。
―――――――『大丈夫かっ!?』
そう聞こえたのだ。
紅蓮に染まる炎の中。
そして、あの時の声はどこかで聞いた気がする。
誰なのだろうか?
考えていると、ゆらゆら眠気が襲ってきた。
今は休暇中だ。
考えるのは後にしよう。
俺は寝台に寝そべり、そのまま目を閉じたのだった。
次