オリヴィエ
ある時をきっかけに何でだか守護聖一の堅物が気になり始めた。
いつもすまして全然笑いやしない堅物。
人を愛する時はやっぱ『ワイルドかつエレガントに』がもっとうに思っていたけど、これば
かりはどうしようと思ってしまって・・・でも、やっぱりここはアタックあるのみ!
でも、まずは・・・
「お互いを知らなきゃね♪」
そう思い、今日その堅物の職務室を訪ねた。いっつも行かないんで流石に少しばかり怪しま
れてるっぽい感じがした。視線が冷たく訝しげにこちらを見てるのがよ〜く感じられた。
私は、当初から用意していた理由「子馬を見たい」と言い出し、なんとか訝しげな視線だけ
は緩ませることに成功した。
ここ最近、この堅物が所有している馬に新しい子馬が生まれたと聞いていたのだ。
堅物は、そのことか。と、納得したように頷いて、
「この資料の整理が終ったら見に行こうと思っていたところ。しばらく待っていろ」
そう言ってきたけど、なんと返せば良いかちょっと悩んでしまった。なぜかいつもみたいに
軽く陽気に流せられなかったのだ。
そして、馬舎へと二人で行った。
向かっている途中、話しは無論、怪しまれないように子馬のこと。でも、どうもいつもの調
子では話せず、少し喋り方がおかしかった・・・・・と、思う・・・。
策の前について係りの人に頼んで連れて来てもらった子馬は真っ白な子馬だった。
瞳がすんだ青い色をしていて、ふと隣にいる堅物の瞳によく似てると思った。
「まだ名前がついていない。なかなかいい名前がうかばなくてな」
私が相槌をうって、しばらくして、またこう言ってきた。
「早くつけて上げたいとは思うのだが・・・」
その言葉を聞いてあたしは少し考え、
「サファイア」
それは、ワタシが堅物の瞳を思い出しながらふと、口にしてしまった言葉だった。
慌てて、何か話をそらすか言いかえをしようとしたら、
「・・・『サファイア』か・・・」
と、なにやら思案しているようだった。でも、「何故?」と、言われたら返答にこまってし
まうから、ここは押しの一手のごとくサファイアがいいと頼み込んだ。
「まあ良いだろう。・・・『サファイア』か」
なんか、堅物の気がここにないって感じの答えが返ってきて少しむっとした。
ったく、何を考えてんだか。
そして、了解を得てこの子馬は命名サファイア。堅物の瞳と同じ色。
「さて、そろそろ帰るとするか」
子馬を見終わったあとこのまま「はい、サヨウナラ」とは行かせたくなかったので、堅物を
飲みに誘ってみた。コイツのことだから乗らないだろうなぁ、と思って次の考えを頭にめぐらしていた時、
「・・・たまには、いいだろう」
と、の返事が帰ってきた。ワタシは内心はビックリしながら、
「じゃあ私の館へ行こう。お前のところよりは近いだろうからな」
そう言い出した堅物に余計ビックリした。
でも、せっかくの誘い(チャンス)に水を差すわけには行かないので速やかに行動を取ろう
と思い、足を動かそうとしたら、
「ん?」
なんと、さっきの子馬がワタシの服をくわえていた。どうやらすっごい甘えん坊のようだ。
これには堅物も苦笑し、ワタシは少し考えここで飲もうと堅物を誘った。ここで嫌だと言わ
れたら全部水の泡とかしてしまうので了解を得る前にその辺の人に頼んで自室から酒ビンを持ってきてもらった。先手必勝だ。
星空を見ながら二人きり(+子馬)で酒を飲み交わすのもロマンチックでたまにはいいじゃ
ないか。
子馬はまだ服をくわえて離さないんだけど、さっきからなんだかあまり堅物の機嫌が良くな
いような気がする。さっきから首を横に振ったりと無言で返事をしてくる。
何故だろう・・・?まさか、さっさと行動に移してしまったことに腹を立ててるん
じゃ・・・と、内心ハラハラとしていた。
しばらくそうやって黙って飲んでいると、いきなり茂みの中からオスカー(邪魔者)が現れ
た。
「・・・なんでここにいるんだオリヴィエ・・・?」
「一緒に酒をのんでんのよ」
ワタシは悪い?と、座った状態で少し踏ん反りがえってやると、向こうも少し不機嫌になっ
たらしく、「別に」と、短く返事をしただけですぐ堅物の方へと歩み寄ってしまった。
どうやらオスカーは、堅物へ届いた急な書類を運んできたらしい。
ここで、おかしいのは堅物がオスカーに礼の一言も言わずワタシ達を怪訝そうに見ていた事
だ。オスカーは堅物の右腕だから何事にも信頼しているはず。
二人きり(+子馬)の時間をつぶされてワタシも少し苛立ちを覚えたけどこのまんま、だん
まりで酒を飲んでもしょうがないと思って、オスカーに一緒に飲まないかと誘った。
酒ビンを見たオスカーは、
「お!・・・これはなかなかいい酒じゃないか♪」
と、いうことで一緒に飲むことに。
とことん、酒には弱いわね・・・・コイツは・・・・。(小さくため息)
そうして、しばらくは昔話を話していたが、ふいに・・・
「私はそろそろ帰るとしよう。お前達はまだここにいてかまわんぞ」
そういって、堅物は急に立ち上がって帰ってしまった。
何かよくないことでも言ったのではないか、と、内心穏やかじゃないとき、
「・・・・オリヴィエ・・・・」
「何よ?」
「ジュリアス様と何かあったのかよ?」
「なんにもないわよ。失礼ね」
こっちだって知りたいんだから!
「じゃあ、なんであんなに機嫌が悪かったんだ・・・?」
・・・・・・・・・・・・やっぱり機嫌が悪かったんだ・・・。
心の中で脱力感を覚えた。
その理由はまったくわからないし・・・まさか嫉妬のわけないだろうし・・・。
「あ〜あ〜・・・・」
ワタシはため息をついて芝生に寝転び瞼を閉じた。
「どうした?いきなり気が抜けた声出して?」
ふん。のんきなヤツ。ワタシは心の中で舌を出した。
「どうでもいいけど、それ、ワタシが持ってきた酒なんだけど」
と、オスカーが持っている酒のビンを指差し軽く睨んで言うと、
「お前のか・・・・それなら余計な気づかいは無用でじゃんじゃん飲めるな♪」
おい。なにがじゃんじゃんよ。少しは遠慮しろってーのよ。
ワタシはオスカーからまだ半分ぐらい残ってる酒ビンを奪い取った。
「あっ何しやがる!!」
「これはもって帰って自分で飲むことにするよ」
そう言って立ち上がりその場を去った・・・。
子馬に引っ張られたが今はかまけている気はなくなっていた。
「オイ!!オリヴィエ!!」
ふんだ。あんたと飲む趣味は生憎、今日は持ち合わせていないのよ。
「ちっ!!」
オスカーの舌打ちした音が聞こえいい気味に思えた。
帰り道、ジュリアスのことが気になってた。
はぁ〜やっぱ今回は失敗に終わったのかね〜・・・。
まぁそう最初から上手く行くわけない、か。
こんど何気なくルヴァにでも聞いてみようかね・・・。堅物の趣味とかさ。
そんなことを考えながらしばらく歩いていて、ふと片方の耳が軽いことに気がついた。
どうやら、お気に入りのイヤリングを片方どこかに落としてきてしまったようだ。
「・・・・ついてない・・・・」
来た道を戻りながら探そうかとは思ったけど、今日は疲れてしまったし、探すのは明るく
なってからのほうがいい。このまま、館に戻ることにしよう。
遠い未来にため息をついてワタシは自分の館へと続く道を再び歩き出した。
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懐かしきかな・・・それしかコメントありません;;