恋文




それは、先の戦(黄巾の乱)で共に張角を倒したことに始まったのでありました。

「あぁ〜・・・あの時の甘寧は素敵だった・・・・」

共に敵本陣まで攻め入ったとき、危うく敵に攻撃されそうなところを、危機一髪で助けてくれたのが甘寧だったのでありました。

「あの時・・・逆光に輝く刀を躍らせ、敵に向かっていく雄雄しい姿。どうやって忘れることが出来ようか・・・・」

と、毎晩のごとく呟く趙雲でした。

でもそれって、実は自分にはかっこ悪い場面だったのでは・・・?

それに、呟いてばかりじゃ、気持ちが伝わることは無いぞ〜〜〜。

「どうしたものか・・・・真正面から行っても怪しまれるだけだ・・・。かといって、裏から潜入したとしても、向こうの地理は分からぬ・・・下手に迷って、 他の者に見つかってしまったら、きっと偵察に来たと勘違いされる可能性もある・・・・・・・」

悩む趙雲。

「また呉と共に、挑む戦は聞かされていない・・・」

これでは、思いの相手に話すどころか、会うことも出来ません。

「・・・・・・はっ!そうだ!!!」

おや?どうやら何か良い考えが思い浮かんだ様子の趙雲。

「思い立ったが吉日。早速始めるとしよう!!」
 
 
 

そして、時は流れ。
 
 
 

こちら、呉の国。

今日も朝から、手下と共に船の整備をしに来た甘寧こと、甘興覇。

今日は晴天、お仕事するにはもってこい。

「甘寧さ〜ん。すべて終わりました?」

「お〜。お疲れさん!休んで良いぞ??」

と、少しのほほんとした甲板。

其のとき、

「こちらに甘武将はおられますか?」

なにやら配達の人が。

「ぁあ?俺だが・・・」

「これが、貴方様宛に届いていました」

と、差し出されたは一通の手紙。

「お。どもな」

礼を言って手紙を受け取り、早速見ようと・・・・・

「・・・・・・・・俺、字ぃ読めねぇーんだった・・・」

そうなのです。もともと、海賊の身。字を学ぶ機会を小さいころから持たなかった甘寧は字を読むことが出来ませんでした。

「どうすっかな?・・・・・・・呂蒙とか、陸孫にでも読んでもらうかな」

手紙は腰の帯に挟み、さぁまたお仕事です!
 
 
 

そして日は暮れて・・・
 
 
 

「お〜い、呂蒙!!陸孫!!」

仕事終わりの夕暮れ時。中庭でなにやら話をしていた二人を見つけ、甘寧は声をかけました。

「ん?」

「あ、甘寧殿v」

「一杯付き合わねーか?」

と、掲げたのは酒樽。どうやら、今日どこからかいただいてきたもののようですね。

「おう。良いぞ」

「あなたのお誘い、この私が断るわけ無いじゃないですか♪」

と、やや一名怪しい人物も踏まえ、三人の酒盛りが始まりました。

(場所は甘寧の部屋)

ほろ酔い気分で気持ちよくなってきたころ、

「あ、そういえば。・・・今朝方、俺宛にこんなのが届いたんだけどよ・・・・俺、字ぃ読めねぇーからどっちか代わりに読んでくれねぇーか?」

と、取り出したのは整備のときに届けられた一通の手紙。

「お前宛に手紙とは・・・。また、珍しいことだの」

と、手紙に手を伸ばそうとした呂蒙の、一瞬先に・・・

「えぇ。本当に珍しいですね」

と、顔は笑って目が笑っていない陸孫がその手紙を半ば毟り取るように受け取りました。

男の嫉妬は怖いですね。しみじみ。

そして、手紙の封を開け中身に目を通しはじめました。

「・・・なんて書いてあんだ陸孫?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「陸孫殿?」

「・・・・・・・・・・・・・・ふるふるふる・・・・」

なにやら手紙を持った手が震えていますよ、陸孫さん。

「り・陸孫?」

恐る恐る聞く甘寧。

「・・・・・・・・・・・これは・・・」

「これは・・?」

こちらもビビリばがら聞く呂蒙。そんなに怖い形相しているのですね・・・・。

「決闘です!!!!」

いきなりがばっと立ち上がって握りこぶしでバックに炎メラメラの陸孫。
さすが、呉の放火魔!!通り過ぎた後は草の一本も生えてませんね!きっと!!

「「け・決闘!!?」」

残る二人は怖がりながらもその言葉に驚きました。

「お・俺宛に決闘の申し込みか!?」

『決闘』その言葉に目がきらきらと輝き始めた甘寧。

「え・・・・・・」

と、先ほどとは打って変わって陸孫は呆気な顔に。

「そうなんだな!?」

決闘の言葉にとても喜んで陸孫に詰め寄った甘寧。

「ぇ・・・え・・・・と」

実は、決闘と叫んだのは自分(陸孫)に対してのことだったのです。

「日は!?時間は!?場所は!?!?」

「え・・・・と、明日の寅の刻、ここから戌の方向に四里ほど行った所にある、大樹のところ・・・」

「よし!!わかった!!!いっちょやってやるぜ!!!」

陸孫の様子から、『決闘』はどのような意味で使われた言い回しかピンときた呂蒙は触らぬ神に崇り無し。と、再び酒に口をつけ始めていました。

さぁ、良い子の皆さんはお気づきですね?手紙の差出人が誰なのか。
 
 
 

時は過ぎて大樹の下

「あぁ・・・・甘寧。今日はきてくれるだろうか・・・・・・」

と、樹の下ではやはり冬眠明けの熊のごとくうろうろとする男、趙雲が一人。

気付きましたね?あの、手紙の差出人はこの趙雲なのです。

そして、あの手紙の内容とは・・・・

「あぁ・・・・私の熱いこの思い・・・・。今日こそ告げてみせよう!!」

と、言っていれば分かりますね?

はい。そのとおりです。あの手紙の内容は『恋文』現代で言えばラブレターです。

でも趙雲は知る由もありません。その手紙を真っ先に陸孫が呼んだため甘寧はとてつもない勘違いをしてしまったことを・・・・。

ああ。哀れな趙雲。あの放火魔を敵に回してしまったとは!!!

あら?趙雲の居る方へなにやら馬の駆ける足音が近づいてきましたよ?

「っは!!」

と、颯爽とそこに現れましたのは我らの甘寧。

「悪いな。遅くなっちまった・・・・って、あんた・・・・確か蜀に居た・・・」

「甘寧殿!!趙雲です!!蜀の趙子龍です!!」

「あぁあ(思い出したように手を打って。馬から下りて)!!あんただったのか。俺に決闘を申し込んできたのは」

「・・・・・・・決闘?」

「あんたなんだろ?あの手紙。」

「あ・・あぁ・・・確かに手紙は出したが・・・・・・」

「じゃ、間違いないなッ!」

言いながら、腰に挿していた愛刀を抜き放った甘寧。

「ッ!!急に、何をするんだ!?」

抜き放った瞬間、とっさにそれをよけ、甘寧から数メートル退避した趙雲。

「何(なに)だ?だ・か・ら、決闘だろぅがよ?決闘」

と、目が怪しく輝く甘寧に対して青ざめる趙雲。

「ち・違う!!私は決闘など申し込んでいない!!!」

さぁ、大変です。本当だったらアッツ〜イ、思いを告げるがため書いた恋文が何かの手違いで決闘に内容が摩り替わってしまいました。

さぁ、趙雲!男ならどうでる!!?

「何・・・?違う・・?」

「ああ!!俺はお前に・・・・・・・その・・・・・」

お?い、弱気になっては聞こえないぞ〜〜〜。

「俺に、なんだ?」

ひとまず、愛刀を腰に戻し話しの先を促して。

「その・・・・言いたい・・こと・・・が・・・・」

戦のときはあんなに強気なのに、こんな大切なときにこんなに弱気になっては・・・・・やれやれ。

「言いたいこと?なんだ?」

さぁ、勇気を決めて一気に!!!

「わ、私は・・・お前のことが・・・す・・・好き----------------------・・・・・・・・・・・・」

「甘寧殿ーーーーーーーーーーーー!!!!」
 
 
 

ガサササァァァァァァァァァァァァ!!!!!
 
 

と、そこに茂みの中から突如勢いよく飛び出してきました。
それは呉の放火魔こと、陸孫。

「大変です!!!甘寧殿の船が一席足りません!!!」

「何だと!?」

さぁ、大変です。決闘や話しどころじゃなくなってしまいました。

「悪い!!蜀の武将さんよ。そうゆうことで俺急いで帰らなきゃいけねーんだ!!

「え・・あ・・・」

いきなりの展開についていけない趙雲。

「じゃな。また誘ってくれよな!!・・セイヤ!!」

と、再び馬にまたがり着た道を駆け戻っていく甘寧。

「・・・・抜け駆けは許しませんよ?」

甘寧の姿が見えなくなったことを確認し、陸孫はおもむろに口を開きました。

「・・・まさか・・・今のはそなたの仕組んだことか・・・?」

「さぁ?なんのことです?私は私の愛する私の大事な興覇に大事な事を伝えに着ただけのこと」

嫌味たっぷりな陸孫の言葉攻め開始です!!

「っつ〜〜〜〜〜〜〜貴様〜〜〜〜〜!!!」

趙雲は顔を真っ赤にし怒りをあらわに陸孫に詰め寄ると、

「貴様には関係ないことだろう!?思いを伝えるのはその者の勝手なこと!!他の者が関与することではない!!!」

大事な告白の場面を180度大回転されたことに大憤慨。ま、あたりまえですね。

「そうですね。私が関与することではないかもしれません・・・・ですが・・・」

「・・・・・・・なんだ・・・?」

いきなり怪しい笑い方をする陸孫に少し恐れを感じ少し後ずさってしまった趙雲。

「ですが、興覇は私のもの!!誰それに渡すわけには行かない!!!」

こちらも本気だ!!本気で怒ってる!!!!きゃー!!

二人の嫉妬と怒りの炎があちらこちらに見えまくっております!!!きゃーきゃー!!

「・・・・貴様とは一戦交じわねばならぬようだな・・・・・・」

と、趙雲。

「どうやらそのようですね・・・・・」

と、こちらは陸孫・・・・・。

二人は共にどこから出したのか自分の武器を握り締め、小鳥がさえずる大樹の下、本当に決闘をはじめましたとかないとか。
 
 
 
 

おまけ。

「陸孫、どうしたんだその傷?」

「あ、甘寧殿♪ いえなに、之は聞き分けの無い動物を相手にして軽く引っかかれただけのこと。あなたが気にしてくださるほどのもんじゃありません」

呉には全身擦り傷打ち身切り傷を負って包帯でぐるぐる巻きの一人の若い武将が。
 
 
 

「子龍よ・・・どうしたのだ?その傷は・・?」

「殿・・・いえ、之は野良の頭の悪い猫を相手にして出来たかすり傷。ご心配くださるほどのものではありません」

と、こちらも全身擦り傷打ち身きり傷で包帯ぐるぐる巻きの若い武将が一人。
 

『次は絶対に負けない!!!』

その夜、何故か重く感じる空気に一人寝付けない甘寧でしたとさ。
 
 

                                                      おしまい。
 
 
 
 
 
 
 

後書きという偽名の言い訳。

・・・・・・ごめんなさいです。趙雲ファンの方!!!(必死)
別に趙雲が嫌いじゃないんです!!(と、いうか好きv)
ただ、ちょっとお馬鹿な姿も見てみたいと思ってこの話を書いてみましたv
自分的には甘寧が颯爽と馬にまたがり走る姿を思い浮かべるだけで鼻血ものです!!(馬鹿)
はぁ?・・・・赤兎馬になんか乗らせて走らせたらもっとかっこいいだろうな?・・・・・(大馬鹿)

さて、どうでしたでしょうか?
感想などありましたら、拍手に書いてもらえたらとても幸せですv