とある午後の昼下がり。


「幸せってなんだろう?」

あいつは、ある日急にそんなことをつぶやいた。

「幸せ?何詩人ぶってんだよ?」

俺は軽く笑い受け流すように再び見ていた窓の外の景色へと視線を投げた。

「だってさ・・・なんかすっげー自分が小さく感じんだぜ?」

「はぁ・・?それ、いったいどこを見てそういう答えが出てくるんだ?」

「空」

そういって指差した窓の外には秋晴れの晴れ渡った青い空、日光の暖かな光が教室の中を満ちていた。

「だから、てめーはいつの間に詩人になったんだよ?」

「別に、詩人ってわけじゃねーよ・・・でも・・・」

「でも?」

「なんかさ・・・こう、空が澄んでるとなんか全部見透かされちまいそうで・・・俺が持ってい幸せもなんか無性に小さいものに感じて よ・・・・・」

「幸せねぇ・・・・」

いまいちピンとこない言葉だ。

なんせ幸せというのは現実的な言葉である反面、かなり非現実的な言葉だからだ。

「そ、幸せv」

そういうお前のほうが見ていてばかばかしいような顔つきだよ。 

「で、そのお前の小さな幸せって何なんだ?」

「ん〜・・・・・秘密♪」

「あ、そう」

「深く聞いてくれよ!」

自分で秘密とか言いながら、離すとすがるように寄ってくる。

秋晴れ静かな昼下がり。

窓からは暖かく眠気を誘う太陽の明かり。

もう少し、のんびりとしたい気持ちだ。