あ〜ぁ、やっちまったよ・・・



それは友達二人、陸孫こと伯言とともに趙子龍の家に遊びに言ったことから始まった。

っていうか、まずこいつらの所に遊びに行ったこと自体が第一の間違いだったんじゃねー か・・・・?


それはとある日曜日。大学が夏休みになって俺は久々の長期休みを満喫するために何をするかと思案していた。

映画を見に行くのもよし。どっか友達を誘って新宿とかに繰り出すのもよし。

そんな時、不意に横においてあった携帯がなった。

「誰だ?」

それは一通のメールだった。


『 件名:お久しぶりです。

本文:高校を卒業していらいかな?元気にしてますか?

こちらの大学はいろいろと宿題など出されててんやわんやの大忙しでしたよ(疲)

今日、久々に暇な時間が取れたので、もし都合が良かったら遊びに来ませんか?

お返事待ってます。


追伸

陸 伯言も着ます。

                                                  趙 子龍より。 』


それは高校のころ中の良かった親友からだった。

「おお!すっげー久々じゃねーか!!」

俺は二つ返事ですぐにそいつの家へと出かけていった。


伯言も来んのか〜・・・久々だな〜。

子龍の家の最寄駅に向かう電車の中で俺は今日会う懐かしい親友のことを思い出していた。

まずは、陸孫こと陸伯言。うちのクラスの学級委員をやっていて成績優秀,スポーツ万能,そ のうえ顔よし性格よしの三拍子どころか四拍子揃ってるやつ。

なんでだか細かい理由は忘れちまったけど、万年赤点の俺とすっごく仲良くて、よく勉強も教 えてもらったよな〜・・・・・・赤点は赤点だったけど。

それから、趙子龍。高校1年からずっとクラスが同じで、何をするのもいっしょにやった。文 化祭でお化け屋敷をやるときも二人でお化けやったり、体育祭で二人三脚も二人でやった。他にも、色々と二人で遊びに行ったりもしたっけ。

懐かしいよな〜・・・高校卒業してからみんなバラバラの方角に進んじまったけど元気にし てっかな?


はやる気持ちを抑え、俺は最寄り駅で降り、記憶を頼りに子龍の家へと向かった。


「えーっと・・・確か・・・・この辺だったよな・・・・・」

辺りを見回しながら高級住宅街の中を歩いていく。

なぜ、高級住宅街なのかというと、子龍はお坊ちゃまなのだ。んで、なにを言おう伯言もそん じょそこらには居ないお坊ちゃまなのだ。・・・・・・・・・・・・・で俺はフツーのサラリーマンの息子。

世の中って本当、不平等だよな〜・・・・・・


そんなこんな考えていたら目的の家に到着。

「あったあった!ここだここ」

目の前に聳え立つのは鉄の柵と門に囲われた真っ白な高級感を表すきれいででかい家。

ちなみに俺は家賃5万の1DKだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ かえろーかな・・・・・・・・」

俺は無意識のうちにぽつりと言った。

「せっかく来たのに帰ってしまうんですか?」

急に後ろから声がし俺はあわてて振り返った。そこには、

「伯言!!」

あの学級委員様がコンビニの袋を引っさげて立っていた。

「お久しぶりです。興覇」

なんか、こいつの顔見ただけで懐かしくて嬉しくなってきた。

「ああ。元気だったかよ?」

「ええ。大学のほうもなんとか教授を唸らす事の出来るレポート5本は書けましたし」

と、心底安堵したような顔の伯言。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こいつの教授、可哀想・・・。

「ま、こんなところで立ち話もなんですし、早く入ってしまいましょう。子龍も待っています よ」

「ああ」

チャイムを鳴らすと、自動的に門が開かれた。

・・・・・・・うわー・・・・・・・・オートシステムだ・・・・・

「よくき着てくれた。ほら、上がって上がって」

と、嬉しそうに玄関の扉を開けて中に招いてくれた子龍。

中に入って目に付いたのはきれいな藍色で模様が描かれた壺だった。

すんげーたかそー。・・・・・割らないように気をつけよう。

「はい。手土産です」

「ああ。ありがとう」

と、伯言は子龍にコンビニの袋を渡した。

「あ、俺何も持って来てねー・・・」

すっげー久々で、会うことしか考えてなかった・・・・・・

「いいんだよ。別に」

「そうですよ。私はただ持ってきたかったから持ってきただけなんですから。それに興覇は私 達に会いたい一身で忘れてしまったみたいですし。其方のほうが私は嬉しいですよ」

「・・・わりぃー・・///」

なんか、恥ずかしーな・・・・

「そうだよ。私だってその方が嬉しいんだから。ほら、早く中に入って」

中に招かれ俺たちは最新のゲームや、高校を卒業してからのそれぞれの大学での話などたわい もないことをして過ごした。

懐かしくて、すぐに昼なんか過ぎちまった。

「あ、もうこんな時間だ・・・」

時計はもう6時半を回っていた。

「それじゃ、俺はそろそろ帰るかな・・・・」

「それじゃ、私もそろそろお暇させてもらいましょうか・・」

と、俺に続いて立ち上がった伯言。

「そうか。今日は楽しかったよ。・・・そうだ、良ければせっかくの夏休みだ。またみんなで 遊びに行かないか?」

「そうですね。せっかくの夏休み、楽しまなくては損ですものね。興覇は?」

「俺?全然いいぜ!なんせ呼ばれたときも夏休みの計画を考えてたんだしな」

「なら、決まりだな。また計画がまとまったらメールか電話で連絡するよ」

「ああ」

「分かりました」


そして、俺は玄関先で靴を履いているとき、不意にバランスを崩してしまった。

「おわ!?」

ぐらっと、横にあった棚にぶつかってしまった。


「ガッシャーン!!」


・・・・ガッシャーンて・・・まさか・・・

俺はあわてて手を突いたところを見た。

「大丈夫ですか興覇!?」

「大丈夫か!?」

二人の声が遠くに聞こえた。

俺の手が付いているところには、来た時に見たあの藍色の高そうな壺が無残な姿であった。

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

それに気がついた後の二人も無言だった・・・。

ど・どうしよう!?俺、目利きじゃねーからいくらの価値があるか分からねーけど、子龍の家 にあったってことはそれそうようの高いシロモンなんだよな!?

もしかして100万とか!?1,000万とか!!?それとも、俺1人死んでもまだ足りない か!!?!?

「・・・し・子龍・・・・・」

俺は覚悟を決めて子龍へと声をかけた。

どうか、どうか頑張って働いて返せる金額でありますようにっ!!

「あっちゃ〜・・・・・・・」

いまさらになって「あっちゃ〜」かよ!?

「興覇、手に怪我しなかったかい?」

「あ・・ああ・・・それは平気だけど・・・」

「良かった。貴方に怪我があったらどうしようかと思いましたよ」

伯言も胸を撫で下ろした。

・・・・・・二人の様子から見てこれはさほど高そうでもないぞ・・・・・・

「し・子龍・・・これ、いくらしたんだ・・・?俺弁償しなきゃ・・・・・」

「え?あぁ・・いいよ。私は興覇に怪我がなかったならそれで」

と、さりげなく壺に触れていた俺の手をそっとつかみ手に付いた欠片を取っていく。

「で・でも・・・高いんだろう?これ・・・。やっぱ、弁償しなきゃ・・・・・」

「まぁ・・・・・でも、さほど高いわけじゃないから・・・」

「そ、そうなのか・・・・・?」

「えーっと・・・・・確か、5,750万ってとこでしたかね・・・・・・?」

と、指を折って数えた伯言。

「Σ(゜Д゜;)ッ!!!」

「そんな、もんだったか・・・」

ご・・・・・5,750万!!!!!

む・・・ムリだ!!!俺には到底払えねーーーー!!!

「大丈夫ですよ、興覇。こんな壺、またうちから贈らせますし」

「そうだよ。あまり気にすることはないよ。事故だったんだから」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・また、うちから贈らせます し・・・・・・・・・・・?

まさか・・・・・・

「この壺って、伯言の家からの贈り物・・・・・・?」

「ええ。父が子龍の父君に送った壺ですが、なにか?」

な・・・・なにぃ〜〜〜〜!?

「そ・そんな大事なもんなのかよ!!?」

それじゃいくら金で払っても払いきれないじゃねーか!!

「別に、そんなに気にするような代物じゃないですよ?」

「そうだよ。こうゆう物は本当にうわべだけの物なんだから」

「でも・・・俺・・・・」

・・・どうしよう・・・そんな大事な贈り物じゃ・・・弁償しきれないよ・・・・・

「興覇・・・」

「ごめんな・・・・子龍、伯言・・・・」

「・・・・」

俺がしょげている所為で二人ともなんていっていいのか分からないみたいだ。

でも、俺だってどうすればいいのか・・・・

「なら、弁償・・・とまではならないけど、夏休み中私の家で働いく。それで全部チャラにす るって言うのはどうだ?興覇」

「・・・え?」

働く?

「うちの家も、夏休みといって手伝いの人も実家に帰ったりと手薄になっているんだ。だか ら、その埋め合わせみたいなもので・・・・」

「つまり・・・・家政婦みたいな・・・もんか?」

「ああ。そう思ってくれてかまわない。夏休みは今日から1ヵ月半ほどだろ?よかったらこの 家に寝泊りして、働いてくれてもかまわない」

「・・・それだけで、いいのか・・・?」

「ああ。それで興覇の気が済むなら」

・・・子龍・・・

「俺、頑張って働くな!!!」

「なら、私もここに泊まらせてもらいましょうかね。一人ではつまらないですし」

伯言も、そう言って優しく笑ってくれた。

伯言・・・

「まぁ、部屋は余るくらいあるし、二人ほど人が増えても大丈夫だろう」


『貴方だけには譲りませんよ?あの“協定”忘れたとは言わせませんからね?』

『そんなの百も承知だ。この子龍、せこい真似はしないさ』


なんか伯言と子龍が何か話してるけど、今の俺はようやく弁償できる方法を見つけ、そんなこと気にしている余裕はなかった。

「じゃぁ、俺今すぐ帰って荷物まとめてくる!!」

「ああ、なら車で送るよ。そのほうがお金もかからないし、荷物も運びやすいだろ?」

「え・・・でも、そんなことしてもらったら・・・」

立場は俺のが弱いのに・・・・

「気にしないで。それにその方が早いだろ?」

「・・・・じゃあ、お願いな」

「では、私も一度家に帰ってからまた来させていただきますよ」


そういって俺は伯言と別れ、子龍の車で一時俺のアパートへと向かった。


あ〜ぁ、やっちまったよ・・・・・

俺の心には後悔の言葉が残った。

あ〜あ・・・・・俺の夏休み、全部つぶれちまったな・・・・

車の窓から見える、流れる景色を見ながら俺はそう心の中でつぶやいた。


俺の波乱万丈な夏休みはこうして幕を開けたのだった。



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ねこねこ センター三峡支部さんの雪兎心花にリンクのお礼として捧げた「家政婦」ねたでございます。
ん〜・・・どこが家政婦・・・になっているんでしょうか・・・・;;;
物壊しただけじゃん・・・・・・・(ぼそり)
そ・それでこの話は場かな狼が作ったために『続き』というものを書かなくては終わらない!!っていうほどの中途半端に終わってしまいました。
がんばって続き書きます・・・(泣)
がんばるもん!!!